スロウ、メロウ。

ゆっくりと、熟れう。こころにうつりゆくよしなしごとを。
ゆっくりと、熟れう。
こころにうつりゆくよしなしごとを。
何度も持ち上げる瞼

何度も持ち上げる瞼

まとまった雨が降り始め、窓を締め切って眠った翌朝、カーテンの隙間から射した光で目を覚ませば、部屋のなかはむっとしていて、梅雨がそこまで来ているのを思わせるような暑さだった。

窓を開けて、風を通して、うんと伸びをして。久しぶりの通勤のために、目を擦る。仕事に行くためだけにしては珍しく(勿論、いつだって最低限はするけれど)、丁寧に化粧をして。

いつもの音楽をかけて、雲ひとつない晴天のなか、川沿いの道を車で走る。朝日に川が反射して、その奥には山々がうっすらと主張して見えた。

毎日のように通っていた道を走らせていれば、二週間前には身を潜めていた花が道端に咲いていたり、歩道に並ぶ銀杏が若い葉を揺らしていて、季節が進んだのを感じる。

なんだか仕事用の敬語を使うのは久しぶりだなぁ、と話す前にふと思った。想像していたのよりも嬉しい言葉を掛けられて、いつもより数倍、よく喋ったような気がする。

自分が愉しむことを忘れないこと。
躓いてしまう性分はどうやら変わらなさそうで、だからこそ、面白がって生きようとすること。
笑うときに、なるべく嘘はつかず、心からきちんと動かすこと。
大きくも小さくもせず、等身大の感情が届くように感情を言葉に乗せる努力をすること。
丁寧に、正確に、冷静に、いつも感謝を忘れずにいること。

深く息を吸って、いつもの自分が仕事のときに心に留めていたことをひとつひとつ思い出した、そんな日。

name
email
url
comment