スロウ、メロウ。

ゆっくりと、熟れう。こころにうつりゆくよしなしごとを。
ゆっくりと、熟れう。
こころにうつりゆくよしなしごとを。
ひとのゆめ。

ひとのゆめ。

最近は、ひたひたと夢を見ている。
かなしい夢だ。
これは夢だ、と思い、夜はふと目覚める。
現実と夢の違いは、なんだろうか。
そんなことを考えている。

雲が夏の形をしているんだなぁと、久しぶりに外へ出て思う。お昼寝の時に見る、窓越しの空より少し流れが早い気がして、季節に置いていかれるわけだな、となんだか納得した。

立夏。七十二候で言うところの、蛙始鳴。
朝晩はまだ冷える。風は冷たい。
暦の上では春を過ぎたというのに、未だ冬から抜け出せない、指先を擦ってみる。

先週、白いフリージアが、散った。
春になると庭に咲き、その切り花が家中に飾られるのだけれど、今年の、その最後がひっそりと朽ちた。
蕾が膨らみ、ひとつ、ふたつとようよう花開き、いらっしゃいと迎えた春の日のことを思い出した。玄関先で甘い香を放って待っている彼女に、今年はもう会えない。
茶色くなった、その花びらすら愛おしくて。そっと指で、撫ぜた。
今年も可憐だった。
さよならだね。また、待っているからね。

かなしい夢。
愛おしく、儚い。

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